ホッとし、再び話しかけようとした瞬間、小さかった背丈がすっと伸び、リリアはギクリと言葉を失う。

違う。ボンダナ様じゃない。すぐにそう判断したが、遅かった。

ゆらりと振り返った相手の顔を見て、リリアはよろりと後ずさる。

一生懸命追いかけていたのは、会いたくないと思っていたオーブリーだったからだ。

オーブリーの目はしっかりとリリアを捉えている。

妖しくにやりと笑ったことにぞくりと肌が粟立ち、リリアは身を翻し走りだす。

しかしほんの数歩進んだところで後ろから腕を捉えられ、そのまま圧し掛かられる形で、地面へと押し倒されてしまう。

必死に抵抗するが、うつぶせの体勢のままオーブリーに上から押さえつけられ、リリアは動きが封じられていく。


「上手くいったようね」


顔を上げ、リリアは愕然とする。

ゆっくりと近づいてくるエルシリア王妃の右隣にはふて腐れ顔のセルジェル王子が、そして左には城から去ったはずのユリエルの姿があった。

ユリエルの歪んだ表情から感じる狂気さは、まるで悪魔に魂を売ってしまったかのようで、リリアは恐ろしくてたまらなくなる。