頑なにモルセンヌの話題を拒んでいた理由を知り、目を涙でいっぱいにしたリリアへと、セドマは「そんな顔をするな」と優しく笑いかける。


「結局こうなってしまったが、俺はもう心配などしていない。オルキス様は聡明なお方だ。王となってこの国をより豊かにし、リリアのことも大切にしてくれるだろう」


セドマの言葉が自分の胸の中へと温かく染み込んでいくのを感じながら、リリアはオルキスの顔を思い浮かべ、微笑みを浮かべた。


「うん。オルキス様ならきっと素晴らしい王になる。それに私ね、オルキス様の力になりたいと思ってるの。少しでも彼の支えになれるようにもっといろいろ学んで、しっかり頑張ろうって」

「そうか」


しばらくふたりは黙ったまま窓の向こうを見つめていたが、セドマはちらりと室内を確認した後、囁くように再び話し出す。


「オルキス様から、ソラナのことを聞いたのだろ?」

「……時計塔の話を、少しだけ」


問われた内容に、リリアは鼓動を高鳴らせながら素直に答えると、セドマが項垂れるような仕草をした。


「母親のことをリリアにちゃんと話してやれと、知らずにいるのはかわいそうだと怒られてしまったよ」

「オ、オルキス様がそんなことを?」