思いもしなかった事実にリリアはただただ驚くばかりだったが、ボンダナがセドマに対して感謝を述べたあの光景を思い出すと、見えていなかった部分がゆったりと繋がり合うように、徐々に腑に落ちていった。

そしてなにより、セドマ以外に自分と血の繋がりのある人がいたことが嬉しくてたまらなくなり、リリアは瞳に涙を浮かべる。


「ボンダナ様は、運命の乙女が自分の孫だということに最初から気付いておられた。その上で、予言を言葉にすることをしばらく躊躇っていたそうだ。リリアはテガナ村で暮らす方が幸せかもしれない。モルセンヌに来れば、ソラナのように辛い思いをさせてしまうかもしれないと」


存在すら知らずにいる自分にこんなにも心を寄せてくれていたことを知り、リリアは涙をこらえながら切なさで痛む胸元をそっと手でおさえた。


「しかしボンダナ様は、アシュヴィの民の幸せを願い生きて来られたお方。未来に陰りを感じてしまい、そうも言っていられなくなったのだろう」


セドマは息を吐いてから、自嘲の笑みを浮かべた。


「俺も心配だった。モルセンヌに連れて行く気など毛頭なかったし、テガナ村でもリリアは幸せになれるはずだと信じて疑わなかった」