ふたりのやり取りをぼんやり見ていたリリアは、やれやれといったため息と共にアレグロからちらりと視線を向けられ、華奢な両肩を小さく跳ねさせた。
自分は席を外すべきなのかもしれないと考え、慌てて室内をうろうろし始めてみたものの、この狭い家の中ではどこにいても話し声は聞こえてしまう。
仕方ないとリリアが家を出ようとしたその瞬間、アレグロが口火を切った。
「セドマよ。これから王都にいくつもりなのだろう? だったらリリアも連れて行ってあげなさい」
扉を押し開けようと伸ばした手が、ぴたりと止まる。
息をのんで振り返ったリリアの目に、気まずそうに自分を見つめるセドマの顔が映りこんだ。
王都に行く。それならば自分も一緒に連れて行って欲しい。
抑え込んでいた感情が一気に膨れ上がり期待で瞳を輝かせたリリアから、すぐにセドマは視線を逸らした。
「……えぇ、これから王都に向かおうとしていたことは認めます。しかし、遊びに行くわけではないのだから、リリアを連れて行くことは出来ない」
きっぱりと否定され、身体の中で大きく膨らんだ希望が、一気に弾け散る。リリアの中に残ったのは切なさと、やっぱりそうかという諦めだけ。


