時々遠い目をしているかと思えば、ハッと我に返って食い入るように本を見つめたり、気が付けばまた魂の抜けたような顔で窓の外に広がる青い空を見つめていたりと、集中力が途切れがちになっているリリアに気付いたオルキスはくくっと喉を鳴らし、椅子から立ち上がる。


「休憩する」


立て置かれていた自分の剣を掴み取り腰の脇に携えながら戸口に向かって進んでいくオルキスを見て、リリアは持っていたティーカップをテーブル上のソーサーへと慌てて戻し、思わずソファーから腰を浮かす。

着いて行きたい。

そう思って出た行動だったが、自分にはまだまだ覚えないといけないことがあるのを思い出し、悲し気にソファーへと腰を下ろした。

戸口でオルキスは振り返ると、お預けをくらった子犬のような顔をしているリリアを見て、また小さく笑った。


「リリア、俺の散歩に付き合え」

「はいっ!」


リリアは心の底から嬉しそうに返事をし、オルキスへと小走りで向かって行く。

「わたしくめもご一緒させていただきます」と急ぎ足で歩み寄ってきたマルセロも伴い執務室を出ると、オルキスはのんびりとした足取りで歩き出した。