「さてと。ここいらで私も一つ話をさせてもらおう」


ボンダナが背筋を伸ばしぐるりと周りを見回すと、先ほどの賑やかさなど嘘だったかのように、場が静寂に包み込まれた。


「どうか今日のことは、ここにいる皆が証人となり、多くの民へと語り繋げていって欲しい」


ボンダナは目を閉じ深く息を吐き出すと、何かを受け取るように両手の平を上にし、前へと差し出した。そして厳かに声を響かせる。


「その乙女は、黄金色の豊かな髪を持ち、朗らかに笑う声は人の心を和ませ、深緑の瞳を細め微笑む顔はとても愛くるしい」


ボンダナの手の平の上で何かが小さく瞬いたように見えリリアが目を見張った瞬間、どこからか温かな風が吹き込んでくる。

風は人々の間を悪戯にすり抜けたのち、リリアの身体をふわりと包み込むと、まるで弾け飛んだかのように瞬時に姿を消した。

説明のできない感触にぞくりと身体が震えると同時に、リリアの鼓動が高鳴り出す。


「運命に導かれ、王子は乙女を見つけた」


オルキスも何かを感じたかのようにはっと目を見開き天を仰いだのち、すぐにその目に強い光を宿し、ボンダナを見た。