セドマはボンダナの目の前で片膝をつくと、感慨深い表情でじっとボンダナを見つめ、静かに囁きかけた。


「……お久しぶりでございます」


ボンダナも崩れ落ちるように地面に両ひざをつけると、セドマの手を両手でしっかりと掴み取り、ほんの少し寂しさの漂う笑みを浮かべた。


「たくさん苦労をかけてしまったね。お前には感謝の言葉しかないよ。ありがとう」

「ボンダナ様」


セドマはすぐに首を横にふる。始めて見るセドマの感極まっている顔に、リリアは苦しさを覚えた。


「いえ。私はとても幸せな時間をいただきました。そしてきっとこれからも、変わらぬ幸せを感じることでしょう……感謝しております」


言葉の途中でセドマと目が合い、リリアはドキリとする。

ふたりの会話の深い部分は何も見えてこないというのに、自分のことを言っていることだけは伝わってきたのだ。

戸惑うリリアと同じように、周りの皆もどういう意味だといった様子でボンダナとセドマを見つめている。

しかし、オルキスは微笑ましく二人を見つめ、王は歯がゆそうに顔を歪めていたりと、そのふたりだけはまた違った表情を覗かせていた。

ボンダナは王をちらりと見やってから、続けてぐるりと周りを見回した。続けてセドマから手を離すと、得意げな顔でコホンと咳払いをする。