リリアもまた皆同様、ボンダナから目を離せなくなりつつあったため、不意打ちのように視線を合わせられたことに大きく動揺し、表情を強張らせた。

ボンダナがリリアに興味を示す発言をしたことで、周囲から小さなざわめきが起こった。

多くの民から未来のアシュヴィ王にと期待されている王子と未来のアシュヴィ王の花嫁にもなり得る素質を持つ娘、そしてそれを予言した本人が揃ってしまっているのだから、気にするなという方が無理な話である。

運命の乙女はこの娘のことなのかと問うような視線が飛び交う中、ボンダナはオルキスにニヤリと笑いかけた後、ゆっくりと椅子を下りてリリアの傍らに立った。


「名は何と言う?」


簡単な問いかけにも関わらず、リリアは緊張で頭の中が真っ白になってしまい、答えるまでに少し間が空いてしまった。


「……リ、リリアです」

「そうか。リリアと言うのか」


呟きと共に、ボンダナは嬉しそうに顔をほころばせ、リリアをきゅっと抱き締めた。


「モルセンヌによく来てくれた」


ボンダナからの歓迎の言葉はすんなりとリリアの心に染み込み、温かな光と共に身体の隅々へと広がっていく。