その不機嫌の理由は自分だと、リリアは思っている。

黄金色の髪に深緑の瞳。

提示された条件を聞いた村の女性たちから「王子様に会いに王都に行ってみたら?」と何度も持ち上げられるうちに、リリアは湧き上がる思いを止められなくなってしまったのだ。

もちろん、いくら条件に沿っているからといって、煌びやかな街よりも自然を駆け回っている方が似合う田舎娘である自分が、一国の王子に見初められるなんて大それたことは思っていない。

リリアの希望を膨らませてしまったのは“王都に行ってみたら?”という部分である。

たくさんの旅人たちに話を聞いていたためか、子供の頃からずっと王都モルセンヌに憧れを抱いていたのだ。

これを口実にすれば父に王都へ連れて行ってもらえるかもしれないと考えたけれど、現実は甘くない。

「モルセンヌって、きっと素敵な街なんだろうな」とほんの少し胸の内を露わにしただけで、セドマに心と口を閉ざされてしまったのだ。

不機嫌顔でだんまりを決め込まれてしまえば、リリアはそれ以上何も言えない。

幼いころに母を亡くし、それから男手一つで自分を育ててくれた父親と険悪な雰囲気になることが、リリアにとって一番辛いことだからだ。