返事をしたくても思うように声が出ず、リリアはこくこくと頷き返す。

男は呻きながら落としてしまった刃物へと手を伸ばすも、それに指先が届くよりも先にアレフによって手を踏みつけられた。


「……なんと罪深いことを」


嘆いたアレフの剣と、使いとしてやってきた男性の剣先が、ほぼ同時に喉元へと突きつけられ、男は諦めたように身体の力を抜いた。

オルキスはリリアの身体の震えが止まらないことや、騒ぎに気付き人々が集まってきていることを見て取り、手にしていた短剣を、腰のベルトから下げている鞘へと戻した。


「怪我をしているようなら手当てを……それから、全て聞き出せ」


泣きじゃくっている女の子から抵抗する気力を失っている男へと順番に視線を向けて、オルキスはアレフに命令を下す。

ほんの少し楽しそうにも聞こえる声でアレフが「承知しました」と呟くのを聞き届けてから、オルキスはリリアを軽々と抱き上げた。

混乱が収まらぬ中、横抱きにされたことへの戸惑いと恥ずかしさまで膨らみ、リリアは耐えられないように身じろいだ。


「大人しく運ばれていろ」


オルキスは下ろすつもりがないことを伝えるように、リリアの身体をしっかりと抱え直した。