女の子が勇気を振り絞り発した叫びに、小さな悲鳴が続き、黄色の花が宙を舞う。

声を上げた瞬間、父親のような顔をして寄り添い立っていた男が、女の子を容赦ない力で突き飛ばしたのだ。

咄嗟に倒れた女の子へとリリアは駆け寄ろうとしたが、横から強く腕を掴まれ、弾かれたように顔を向ける。

ぎらついた目で男がリリアを見下ろしていた。

腕を掴む左手にさらに力を込めると、痛みで顔を歪めたリリアに向かって男は大きく右手を振り上げる。

その手に小さな刀が握りしめられていることにリリアは気づき、喉で声を詰まらせた。

身構えた瞬間、リリアの視界に影が差し込んだ。

オルキスは短剣でリリアに振り下ろされた刃を受け止め、なおかつ弾き返すと、そのまま男の懐へと身を沈ませ、みぞおちへと鋭く肘打ちを入れる。

速やかに行われた一連の動作は、リリアの目では全てを捉えきることもできず、気が付いたときにはもう、自分に襲い掛かって来た男が、苦しそうに胸元を抑えながら仰向けに倒れている状態だった。

足の力が抜けよろめいたリリアを受け止めるように、オルキスがリリアの腰へと手を回し、半ば抱きかかえるような形で身体を支える。


「怪我はないか?」