「えっ? ……私に?」


緊張で顔を強張らせている女の子が、リリアの言葉にぎこちなく頷き返してきた。

それはきっと“運命の乙女”に対しての贈り物なのだとリリアは判断する。

自分がそうだと言える自信はリリアの中にまだ存在していない。

しかし、予言された色を持ち、こうして王子と一緒にいる以上、周りからそう取られても仕方がないとリリアは思い直し、ゆっくり女の子へと進み出た。

受け取っても良いのかと確認するように父親へと目を向けると、申し訳なさそうに軽く頭を下げられてしまった。

その様子に苦笑しながら、リリアは改めて女の子と向き合った。


「お花、ありがとう」


受け取ろうとそっと伸ばした手が、違和感に気付きぴたりと止まる。

花を差し出す女の子の手が、大きく震えている。

よく見れば、引き結ばれた唇も何かを我慢しているかのように震え、目には涙も浮かんでいる。

一瞬、自分がソラナに似ていることが恐怖を与えてしまっているのかと考えたが、すぐにそうじゃないとリリアは感じ始めた。

緊張しているのではなく怯えている。そして怯えている相手はリリアではなく……。


「お姉ちゃん、逃げて!」