心の底から無意識に出た言葉が、リリア自身の感動をも呼び起こす。

目を潤ませながらもあちこち目線を移動させていると、そっとオルキスがリリアの身体を引き寄せた。


「この時計塔は悲しい出来事があった場所だと知っていても、居心地が良いからと好き好んで足を運んでしまう自分は、なにかの感情が欠如しているのだろうかと悩んでいたが、リリアがこの気持ちを理解してくれるならそれでいい。これからは気に病むまずに済みそうだ」


リリアの前髪に頬を寄せ、オルキスが安堵したように小さく笑うと、リリアはゆっくりと顔を上げ、真剣な面持ちで、オルキスと目と目を合わせた。


「……彼女は、本当にこの塔から飛び降りたのですか?」


言いながら、リリアは心の中でセドマに謝罪をする。


「父から誰にも言うなと止められましたが、オルキス様には聞いてもらいたい。……私の母の名はソラナと言います」


オルキスだけには包み隠さずソラナとの関係を伝えておきたいと、そして、自分のことをもっと知っていて欲しいと強く思ったのだ。


「幼いころに亡くしてしまったから私には母との記憶はありませんが、テガナ村の村長からは瓜二つだとずっと言われ続けてきました」