壁に沿うように造られた階段をのぼって、上階から響いてくる騒がしい音へと徐々に近づいていく。

階段の先では、大小さまざまな歯車がそれぞれの役割を果たすかのように、忙しなく、あるいはゆっくりと律動を刻んでいる。

歯車はリリアの背丈の大きさくらいあるだろう文字盤へと繋がっていて、文字盤の周囲は色ガラスなどで装飾が施されていた。

そこから差し込む光の美しさに目を奪われつつも、前を行くオルキスに導かれるままに、リリアは足を止めず進んでいく。

緩やかな半円を描き進んだところでまた階段が現れ、今度はその先に扉があった。

階段をのぼりきると、鍵のかかっていないその扉をオルキスが静かに押し開けた。


「大丈夫か?」


自分に続いて室内に入ったリリアを肩越しに振り返り見て、オルキスは苦笑いする。

ずいぶんの段数を登ってきたため軽く息を切らしていたリリアも、まったく息を乱していないオルキスを見上げて、口元だけで笑みを返した。

たどり着いた場所は、大人が五人ほど入れば手狭に感じるだろう四角い小部屋だった。階段は見当たらないため最上部と考えて間違いないだろう。

部屋の中にあったのは、小さな椅子が一つだけ。