老婆は叫び声をあげて、リリアを引き留めようと懸命に手を伸ばす。

傍らの女性も緊迫した様子で「やめてください!」と、なおも近付こうとする老婆を必死に引き留めている。

リリアはオルキスと共に時計塔へと進みながら、老婆のことが気になって何度も振り返り見た。

アレフはその場に留まり、女性へと大らかな様子で笑いかけつつ、老婆にも優しく声をかけている。


「ソラナか……言われてみれば、確かに似ていなくもない」

「オルキス様は、お母……ソラナさんのことを知っているんですか?」


オルキスが何気なく発した台詞に、リリアが大きく反応する。

真剣な顔で自分の答えを待っているリリアを、オルキスはわずかに目を細めじっと見つめ返した。


「姿はよく見る」

「……姿、ですか?」


それはどう言うことか。心に浮かんでいる疑問をそのまま表情に現したリリアの肩をぐいと引き寄せ、オルキスは時計塔の裏手へと進んでいく。


「彼女がソラナだと聞いている」


歩を進めていくと、リリアの目の前に一体の石像が現れた。

まるで木陰で休んでいるかのように、その女性は円形の台座の上ににこやかな顔で座っている。