優しい微笑みにリリアの胸が甘く疼き出す。


「でも私は頬まで叩いてしまいました。本来なら厳しく罰せられていてもおかしくないのに、こんなに良くしてもらって」


その場で首を斬り落とされていたとしてもおかしくなかった。

それなのに、オルキスはリリアを咎めるどころか、予定を調整してまで、時計塔に連れて行くというリリアとの約束を果たそうとしている。

全てが恐れ多いことだと分かっていても、リリアはオルキスの優しさに甘えずにはいられなかった。

きっとオルキスは父親の跡を継ぎ、そう遠くない未来、アシュヴィ国の王になる。

確信に近い形でオルキスの未来を思い描くことが出来ているからこそ、どんどん膨らんでいく自分の気持ちに対して、リリアに躊躇いが生まれてしまう。

所作振る舞いをあまり気にすることもなく、田舎でのんびりと暮らしてきたリリアにとって、ユリエルは優雅さの塊だ。

普通に考えたら、オルキスの隣りに立つのにふさわしいのはユリエルの方だろう。

もしかしたら、これからもっと分相応な女性がオルキスの前に現れることだって考えられる。