「……運命」


川のほとりで出会い、そしてモルセンヌで彼が王子だと知ったその瞬間にも、すでに運命は大きく動いているだろうに、オルキスはまたそんな瞬間が訪れると言う。


「あぁ、俺たちの運命が」


自分ひとりでなく、オルキスと共にする運命。

そんな風に考えると、リリアの鼓動も大きく高鳴っていく。

と同時にテガナ村で過ごした日々が遠のいていくような感覚に襲われ、代わりに自分自身にも当てはまる予言のことや、オルキスの立場などが、これから向き合わなくてはいけないこととして、ぐっと迫ってきたような気持ちになっていく。

窓の外には、辺りを警戒しながらも馬車の進みに合わせてゆっくりと進む、黒毛の馬に跨ったアレフがいる。

狭い空間には二人しかおらず、このようなチャンスを昨日から望んでいたことをリリアは思い出した。


「私ずっと、オルキス様に謝らなくてはと思っていました」

「何を?」

「オルキス様が第一王子だと知らずに、随分生意気な口を利いてしまっていたことです」


俯きがちにリリアから語られた懺悔にオルキスはふっと笑みをこぼす。


「それなら俺も謝らねばならない。素のリリアを知りたくて、あえて身分を明かさなかったのだから」

「……オルキス様」