気恥ずかしさを必死に堪えながら呟くと、オルキスが小さく笑う。


「リリア、食事を済ませたら街へ出よう」

「……そんなことをして平気なのですか?」


オルキスと一緒にモルセンヌの町を歩くことがリリアの望みではあったのだが、彼の正体を知ってしまった今、無邪気に喜ぶことに躊躇いも生まれてしまう。


「セドマやグラシナ、もしかしたら他にも。リリアが望んでいることを知れば、街の案内を買って出ようとする人が現れるだろう。そうなる前に、俺がリリアを連れ出す」


優しくリリアの頭に触れてから、オルキスはベッドから降りた。リリアも急いで体を起こし、「オルキス様!」と呼びかける。


「ありがとうござます! 私、とってもとっても嬉しいです!」


胸の前で両手を合わせながら感謝の言葉をさらに繰り返すリリアを見て、オルキスは表情を柔らかくさせる。


「あとでまた呼びに来る。それまでに準備を整えておいて欲しい」

「はい!」


満面の笑みでの返事にオルキスは満足気に頷いてから、そのまま寝室を出て行った。

リリアは嬉しくてたまらなくなり、傍にあった枕を力いっぱい抱き締めたあと、飛び出すようにベッドをおりた。