故郷テガナ村の森の中、木漏れ日の柔らかな光が降り注ぐ土の上を、リリアは裸足でのんびり進んでいく。


(ねぇ、お母さん。この森には本当に妖精がいるのよ)


吹き抜けていく温かな風を頬に感じながら、この森の奥で眠る母へと心の中で話しかけた。

小川のほとりに佇むオルキスの姿を見つけると、リリアの足は自然と早まり、鼓動も高鳴っていく。

そっと手を伸ばし、後ろからきゅっと抱きついた。

黒髪をさらりと揺らし、たおやかに振り返ったオルキスは、包み込むようにリリアを抱きしめる。

オルキスの美麗な顔をじっと見つめたのち、リリアは幸せで満ち足りた気持ちのままにほほ笑んだ。


(巡り合うことが出来たの。簡単には出会えない彼という存在に。胸が苦しくなるほど、こんなにも彼のことが愛おしい)


「……オルキス」


見た目よりも厚みのある胸板へとリリアが甘えるように頬を押し付けると、オルキスの手が優しくリリアの頭を撫でた。

やや間を置いてから、その手がリリアの顎を軽く持ち上げ、額に、頬へとくすぐるように口づけをする。


「リリア」


熱を孕んだ低い声音に甘い吐息が混ざり合う。