再び先頭を歩き出したオルキスが小さく声を発し、肩越しに後ろを見た。


「そう言えば、父がセドマと話したがっているらしい。きっと近いうちに呼ばれるだろう」

「そうですか……わかりました」


わずかに口元を緩めてセドマが静かに言葉を返した時、オルキスは何かが気になったかのように、廊下の奥へと視線を伸ばした。

その様子に気付いたリリアもつられて後ろを見ようとしたけれど、それよりも早くオルキスは顔を前へと戻し、くっとリリアの手を引く。

心なしか足早になりつつ案内されたのは、城に着いた後に通されたのとは別の客室だった。


「室内の確認を」


オルキスの指示を受け、セドマは神妙な面持ちでひとり室内へと入っていく。


「アレフ、念のため今夜はお前もセドマと共にいろ」


続けて小声で出された命令を不思議に思ったのはリリアだけのようだった。

セドマだけでなくアレフまでも、その表情からわずかな緊張が感じられる。


「従者も一人置いていく」


すぐ後ろに控えていた女性から頭を下げられ、リリアもすぐに頭を下げ返す。

身体を起こしほほ笑んだ彼女には見覚えがあった。支度を手伝ってくれた女性のうちのひとりだ。