完全に固まってしまったリリアも、戸惑いながら同じように彼女を見つめ返す。

そして彼女の黒髪と似通っている目元から、先ほど言った“兄”と言うのが誰の事かも徐々に分かってくる。


「グラシナ王女自らお越しにならずとも、お呼びくだされば……」

「どんな人なのか会いたくなってしまって、周りに内緒で来てしまったの。ふたりとも驚かせてしまって、ごめんなさいね」


いつの間にかすぐ後ろまでやってきていたセドマへと、グラシナ王女は屈託のない様子で笑いかけた。

オルキスの麗しさも桁外れだが、グラシナもまた妖精と見間違うほど華やかで美しい。


「名は何と言うの?」

「リリアと申します、王女様」

「リリア! 名前もとっても可愛らしいのね。わたくしはグラシナ、気軽に呼んでくださいな」

「ありがとうございます」


感謝の言葉を返しながら、リリアは気恥ずかしさで頬を赤らめてしまう。

グラシナの好奇心いっぱいに輝く瞳が、なかなか自分から逸らされないからだ。


「同じような色は最近たくさん見かけているけど、やっぱりリリアさんの色は他とは違って見えるわ。とっても素敵!」