王位継承への条件に追加された、ユリエルと夫婦となるという項目をどうしても受け入れることができなかったのだ。

王座も嫁も何もかもすべて、セルジェルに押し付けてしまいたい。

そんなことを考えるようになってしまった今、オルキスは期待を込めてボンダナに問いかけてみたのだ。

しかし「望む未来は限りなく薄い」と返されてしまい、結果、オルキスには絶望と苛立ちだけが残ることとなった。

ボンダナは両手の動きを止めると、そっと目を開け、やれやれといった様子で小さく息を吐く。


「娘の名までは分からん。だが、お前さんが彼女を愛しく思っているのなら、運命の相手はその娘で間違いないだろう」


オルキスはほんの一瞬息をのむ。続けて少しばかり表情を明るくさせ、口元に笑みを湛えた。


「……なるほど」


安堵を滲ませた声でそれだけ呟いたあと、オルキスは気持ちを改めるようにボンダナへと一歩踏み出した。


「話を戻そうか。ボンダナ、何の用があって俺を呼んだ」


ボンダナが膝の上で両手を組み、大きく息を吐く。

次の言葉を発するまでの数秒間、部屋の中で生じた音はボンダナの座る椅子の軋む音だけだった。