今日は営業も出払っていて、みんな直帰だっから、定時で会社を出られた。
ラッキーな日なのに、もやもやが無くならない。
帰りの電車に乗りながら考える…
田中さんってどんな人だろう?
顔は?髪型は?ヒゲ生やしてたかな?
お仕事とか聞いたっけ?
思い出そうと記憶の糸をたどっても、全く思い出せない。
ノーヒントのクイズの様。
朝、優子に言われて、恐る恐るスマホを見た。
たしかに、田中さんがいる。
チャットで、『よろしくね〜!』と陽気なスタンプまで送っている。
う〜ん…
と、ない記憶を思い出そうと、チャットの画面を見ながら考え込んでいると、ピコン!とスマホが鳴った。
ガタン!!
画面を見てビックリ。
驚き過ぎて、スマホを落とした。
周りから視線が集まる。
”昨日は楽しかったですね!“
”またお会いしましょうね!“
!!!!
田中さんからのメッセージ。
ビックリマークのせいか、なんか、勢いが感じられるメッセージ。
そんなに楽しい話をしたのか。。。
思い出せない。
あぁ。タイムスリップしたい。
既に既読になってしまっているから、何も返さないわけにはいかないな。。。と思い、
‘昨日はありがとうございました。’
’またお会いする事があればいいですね。‘
とだけ返しておいた。
無難。
これでいい。無難に返して、あとは静かにフェードアウトしたい。
送信するとちょうど降車駅となり、スマホはバックにしまい、夕飯の買い物のため、商店街に向かった。
