結局何の結論が出ないまま、わたしは家に帰ることになった。

「本当に、どうすればいいんだろう…?」

家に帰ったら嫌でも村雨さんと顔をあわせることになる。

うっかりしたら、彼に向かって自分の気持ちを言ってしまいそうだ。

そう思いながらトボトボと歩いていたら、
「すみません」

その声に視線を向けると、60代くらいの女性がいた。

「はい、何でしょうか?」

何かどっかで見たことがあるなあ。

「ここへ行きたいんですけど、どこかわかりますでしょうか?」

彼女は手元にあるメモ用紙をわたしに見せてきた。

メモ用紙にはマンションの名前が書いてあった。

…おや、どこかで聞いたことがあるぞ?

「5年ぶりに九州からきたもので、道を忘れちゃって…」

苦笑いをしながら言った彼女に、
「あの、もしかして…」

わたしは尋ねた。