「好きになったなら好きになったって、彼にはっきりと伝えたらどうなの?」

敬子はそんなことを言うけれど、
「無理だよ、だって…」

わたしは両手で頭を抱えた。

村雨さんとはお互いの利害が一致しているからと言う理由で結婚をしたのだ。

好きだとか愛してるとかじゃない。

「好きになったって言ったら、村雨さんは迷惑がると思う。

そもそも、そう言うのが嫌だからわたしとの結婚を決意したようなものだし…」

「周りのお節介から逃れたいって言うのが理由だもんね」

「もうどうすればいんだろう…。

わたし、村雨さんへの気持ちを隠したままで生活をしたくないよ…。

と言うか、無理があるよ…」

今まで通りに村雨さんと生活できる自信がわたしの中になかった。

うっかりしたら、彼に自分の気持ちを伝えてしまいそうだ。