「…忠政さん?」

俺の名前を呼んで首を傾げた彼女に対し、俺は自分の手を差し出した。

「えっ、あの…」

「この人ごみの中だ、はぐれたらめんどくさい」

戸惑い気味の彼女に向かって、俺はそう言った。

「あっ、はい…」

呟くように彼女は返事をすると、俺の手に自分の手を重ねた。

繋ぐと、その手は小さかった。

その手を感じながら、俺たちは歩き出した。

「すごいですね、屋台がいっぱいありますよ」

彼女は物珍しそうにズラリと並んでいる屋台を見ていた。

フランクフルトにクレープ、肉巻きおにぎり、じゃがバター、タコスにパエリア…と、屋台飯は豊富である。

あちこちから漂っている美味しそうな匂いに、グーッと腹の虫が鳴った。