*キッチン・風呂・トイレは共同、寝室は別

*必要なこと以外は干渉しない

*お互いに好きな相手ができた場合は、周りにバレないようにつきあうこと


彼女――斎藤ゆめのと交わした結婚生活でのルールである。

籍は入れずに、彼女の住民票を俺の住所に移転させただけである。

結婚と言っても、俺たちの場合は形だけである。

斎藤ゆめのは失業したうえに家も失ってしまったから、俺は世間体から逃れるために、早い話がお互いの利害関係の一致である。

仕事と住むところを提供する代わりに、妻を演じて欲しいと言って、彼女に結婚を持ちかけた。

その提案に首を縦に振った彼女を自宅に連れて帰り、これからのことをいろいろと話しあった末に至ったのだった。