村雨さんはわたしの顔を覗き込むと、
「どうだ?」
と、聞いてきた。

「俺が君に住むところと仕事を提供する代わりに、君は俺の妻になって欲しい」

「契約結婚、と言うことですか?」

「そう言うことだな」

わたしの質問に村雨さんは答えた。

「必要なことがない限り、俺は君に一切干渉しない。

もちろん、寝室は別だ。

物置代わりにしている部屋があるから、そこを君の部屋として使ってくれればいい」

わたしは考えていた。

いつかは誰かと結婚する日がくるんだと思っていたけれど、それがこんな形で迎えることになってしまうとは思っても見なかった。

でも…ある意味では、チャンスかも知れない。

村雨さんは自分のためとは言え、私に住む場所と仕事を与えてくれると言っている。