「もういっそのこと相手がいるとでも言おうかと思ったけど…こう言うウソって、いつバレるかわからないだろう?

ヘタでもして自宅に押しかけられると面倒だし」

「そうですよね」

「それで悩んでたら、行きつけのバーに君がいたと言う訳だ。

家族はいない、そのうえ仕事も家も失くしたから困っていると言う君に俺はある提案を出したんだ」

村雨さんはそこで話を区切った。

「専業主婦として就職するって言うのはどうだ?」

「…専業主婦、ですか?」

呟くように聞き返したわたしに、
「君は仕事も家も何もかもを失って悩んでいる、俺は結婚相手を探しているお節介なヤツらに悩んでいる――まあ、早い話がお互いの利害関係が一致したと言うことだな」

村雨さんが答えた。

「た、確かに…」

わたしと村雨さんの利害関係は、見事に一致していた。