「敬子は、その場にいたんだよね?

わたしと忠政さんが契約結婚をすることになった瞬間に」

そう言ったわたしに、
「正直なことを言うと、あんたたちがうまく行くとは思わなかったわ。

契約とは言え、すぐに別れることになるんじゃないかって思ってた」

敬子が言った。

「村雨さんが“お節介な人間に結婚を勧められて困ってる”みたいなことを愚痴ったら、ゆめのが“あんたのくだらない悩みよりも、わたしの悩みの方がまだマシだー!”みたいな感じで言い返したのよ。

“こっちは仕事も家もなくなったんだぞ、あんたの悩みなんか蚊に刺されたようなもんだ”って、村雨さんにそう言ったのよ」

「ま、マジですか…」

その時のことは全くと言っていいほどに覚えていないけど、ものすごいことを言ったんだな…。