契約結婚だったはずだった。

俺は周囲のお節介から逃げるために、彼女に住む場所を提供する代わりとして結婚を持ちかけた。

好きだとか愛してるとかそう言う理由からじゃなかった。

そんな理由から斎藤ゆめのと結婚をしたはずなのに…いつの間にか俺は彼女にひかれて、彼女のことを好きになってしまった。

こんな自分勝手な俺を彼女が好きになってくれるはずがないと思っていたのに、彼女も同じ気持ちだったと言うことが嬉しかった。

「忠政さん」

斎藤ゆめのが俺を呼んだ。

俺はフッと笑うと、彼女の額に自分の唇を落とした。

彼女は頬を紅くさせると、自分の額に手を当てた。

「――す、すぐに、夕飯の用意をしますね…」

「ああ、わかった」

斎藤ゆめのは逃げるように、キッチンへと足を向かわせた。

その後ろ姿を見送ると、俺は寝室へと向かったのだった。