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短剣使いの若い男性、大剣使いの年嵩の男性。名前を言われたのだが、アマーリエの記憶にはのこされなかった。と言うのも・・・。
「そうそう、次男坊くんって決まったの? 」
「ん? ああ、魔法特性が高いようでね。魔法職を吟味しているところさ」
「へぇ、親子でおなじにはならないんだなぁ」
「そりゃそうさ。親子でも個人だからな。それはそうと、嫁さんは大丈夫なのかい? 具合が良くないとこの前言っていたじゃないか」
「聞いちゃう? 聞いてくれちゃう? なんと! 4ヶ月でした! 俺もパパデビューだぜ! 」
ピタリとアマーリエの足が止まる。不思議に思い、振り返るふたり。
「アマーリエちゃん? アマーリエちゃんは旦那さんとかいんの? アマーリエちゃんほどの美人さんの旦那、見てみてぇなー」
変わらぬ笑顔が張り付く。
「・・・おりません。ああ、申し訳ありません。用事を思い立ちましたので、お暇させて頂きますわね」
くるりと踵を返すアマーリエ。
「ちょちょちょ! ここまで来ちゃったんだから付き合ってよ! 」
「言い方を考えろ! すまない。女性に対して失礼だったね。今回だけ付き合ってはくれまいか? 」
流石にアマーリエの暗雲は察したらしく、若い男性の口を塞いで言葉を選んだが。
「・・・お探しのモンスターはそちら? 」
質問には答えず、彼らの後ろを指差す。恐る恐るふたりが振り向くと、まさに探し中の土竜がいた。
体長二メートルの、小型土竜が彼らのターゲット。それだった。