アンニュイな彼

「デザートはいいの?」
「っあ、はい……」



カルボナーラを完食した私は、渡されたメニューをおずおずと受け取った。


子供扱いされてるなぁ。
先生にとって私は教え子のひとりであって、恋愛の対象ではない。

無理矢理映画に付き合わされて、立場的に元教え子だから暗くなったら送ると言ってくれて、お腹が鳴れば食事の世話まで……。


「決まった?」
「あ、すみません。 私、やっぱりデザートはやめときます」


メニューを閉じると、私はテーブルの端っこの方に置いた。

私もう、デザートじゃなくて、ワインも頼める年齢なのにな……。


「じゃあ行こう」
「は、はい……」


席を立った先生は、先に歩いて行ってしまう。食べ終わったら、もうここに私と一緒にいる意味などないから。

お会計も、私が気がつかないうちに済ませてくれていて、大人のスマートな周到さみたいなのを見せつけられたような気がした。


「ありがとうございました。ご馳走さまでした」
「……」


レストランを出てぺこりと頭を下げるも、すげなく無視。
絶対聞こえてるはずなのに。素っ気ないなぁ。

もう会う理由、なくなっちゃった……。

石畳の緩い坂道を下って、先生は先に車に向かう。

どうしたら振り向いてもらえるのかな。

どうしたら私、ただの教え子じゃなくて、恋愛対象になれますか__?


「__先生!」