アンニュイな彼

あっという間だった。
送ってもらったら、そこでバイバイして、今度こそもう一度会うチャンスがなくなってしまう。

しょんぼりしながら、流れる窓の外の風景を眺めていたとき。

グーーー。


「げげ! す、すみません……」


ひーっ。
腹の虫は感傷というものを知らないらしい。……恥ずかしい。

チラリと隣を盗み見ると、先生は笑いを押し殺したような表情で、ハンドルを握っている。


「どっかで飯でも食う?」
「えっ⁉︎ いいんですか⁉︎」


前のめりになって反応すると、先生は今度は眉をピクリと上げ、意地悪そうにニッと笑った。


「ポップコーンは別腹だったんだネ」
「……っ」


私は恥ずかしくて、ちょっぴりだけムッとした。
ポップコーンがもっと腹持ちが良ければこんなことには……! と、理不尽にポップコーンを責めながら。

でも私、お腹が空いてるから、食事を摂るのが嬉しいんじゃない。
先生と、もっとずっと一緒にいたいからなんですよ__?


「ここでいい? イタリアンだけど」


先生の車が停車したのは、郊外のレストランだった。
真菜から噂は聞いたことがある。パスタが美味しくて、隠れ家みたいなお店。


「はい! 来てみたかったので嬉しいです」


興奮する気持ちを抑え、私は答えると助手席から降りた。