一旦チラッと確認した私は、両目が飛び出るくらいギョッとして、あからさまに二度見した。

な、なぜにこのシーンで……。
よりによって一番気まずい場面で起きちゃうのですか⁉︎

私を散々驚かせ、気まずくさせた挙句に先生は、次のシーンでは再びそっと目を閉じていた。

わ、私。
なんだかひどく疲れた……。

映画一本観るのに、こんなに体力使うっけ?


「__どうしたの? 歩き方変だけど。」
「だ、大丈夫、です……」


映画が終わり、席を立つ頃には帰りに整体に直行したいくらい、体が石のように固まっていた。

それでも先生が寝てる隙にコツコツ食べたポップコーンの空容器を片手に持って、私はとぼとぼと歩きながら先生のあとを追う。

私、先生に確実に〝変な人認定〟されてる……。

すれ違い様や、映画の開始を待つ女の子たちが、皆必ずと言っていいほど先生のことを見てる。
ついでに半歩背後を歩く私のことも。

きっと、あんな関節カクカクさせて歩いてる子が彼女? いや、そんな訳ない! 全然釣り合わないし、ただ至近距離を歩いている変な他人に決まってる!

て、思われてるんだろうな。

はあ……。


「先生、あの、どこに行くんですか? 出口はあっちですけど」


下ばかり向いて歩いていたせいで、私は出口に向かっていないことに気づかなかった。
足を止めたのは、エレベーターの前。


「車で来たから。」
「え、そうだったんですか」


道理で、駅の方から現れなかったわけだ。