「あ、いやっ、あのですね! お礼というのは私が雑誌を届けたことではなく、先生がご馳走してくれたコーヒーのお礼です!」


く、苦しい言い訳……! 親切の押し売り状態。でも、もう引き下がれない。

なにもできなくて、もう会えないことに絶望して泣いていたあの頃と同じ思いはしたくない。


「お願いします! 私に、チャンスをください!」


当たって砕けろ! な心境で、私は両目をギュッと強く瞑ると、頭を下げた。

ああ……。
なにやってんだろう、私。

自分のテンパリ具合に絶望しそう。
これってもう私、告ったようなもんじゃない?

しばらく気まずい間があって。
刻むような角度で、ジリジリと顔を上げてみる。

先生、もういないかも……という予想はもちろんしていた。
先生のことだから、私なんかとこれ以上関わるのが面倒で、スタスタと先に帰っちゃったんじゃないか、って。

うん。その状況が一番しっくりくるなあ、なんて、妙に納得してみたり。

だけど。


「……っせ、」


顔を上げてみると予想外なことに、先生はその場に立っていた。
本当に呆れたような顔付きで。

そして。


「いいよ。」


まったく気が進まないというような、歓迎なんて全然してないぜ、っていう不本意な言い方だったけど。

絶望するには、まだ早かったみたい。