淡麗なうわずみ

あたしが足を止めたから、心配してくれたみたい。

振り返る。

「何でもないよ、月が、おっきいなって」

九条くんも、見上げる。

「あ、本当だ」

言って、黙って見てる。

何となく、放っておいて帰りづらい。

「オレ、月光浴って好きなんだよね。神秘的な力をくれそうで」

神秘的、か。

役に立たない力だな。

「疲れた。お腹すいた」

あたしは、九条くんの月光浴の雰囲気をぶち壊す。

なのに、九条くんは気を悪くした風もなく、月からこっちに目を移して

「何か食べに行く?」

普通に訊く。

「え、今から?」

「だって、どうせ何か食べるでしょ?」

「そうだけど」

「じゃ、何か買って来て、うちで食べる?ビールもあるよ」

うーん。

なかなかに、そそられるお誘いだな。

「行こーかなあ」