「おにぎり。あんたもおにぎりに支えられたんだな。俺もあんたも」
いつの間にか雲は消えて、どこか顔が明るくなった彼は少年のように笑った。
「…っはい。…あなたの名前は何ですか?」
私は涙を手で拭い、彼に聞いた。
「ああ、俺は吉田圭。あんたの名前はもう知ってる。松井茉莉」
「……あはは。そうですよね。そうだ。今から一緒におにぎり作りません?」
何年ぶりだろう。
私は大げさに口を開いて、なんにも考えずに笑っていた。
「奇遇だな。俺も作りたかった」
彼もちゃんと前を向いて、私というものを知ろうと話をしてくれる。
「じゃあ、戻りましょう」
私は彼の手を引いて、あのご飯マ―クの部屋へと戻った。
おばあちゃん、私何を思っておにぎりを握ればいいかようやく意味が分かったよ。
誰かを思うことで、一人じゃないってことをこのおにぎりを通して伝えなきゃいけないんだ。

