【短】おにぎり


「……な、にが」

いつもの私なら言わないのに。

「私と目を合わせられるのは多分私を知らないから。あと、おにぎりが好きだからです。あなたは、淋しいんです。私と同じく」

「おにぎりは、今関係ない!」

 彼が声を荒げたからか、犬の散歩をしていたおじいちゃんはこちらを見てきた。

 犬もワンワンと吠えて、おじいちゃんにリ―ドをひかれて去っていた。

「あります! おにぎりには、愛情がこもってるから。その思いをあなたも感じたかったのでしょう。誰かが作ることで、自分は存在していると」