【短】おにぎり



「でも、私と目を合わせましたよね?」

 私は無理やり口角をあげて、彼に言った。

「……そうだな。不思議だけど、あんたは目が合わせられる。何でだろう」

 彼は少し微笑み、私に思いがけない言葉を発した。だが、私は思った。

 あなたが人と向き合おうとしていないからじゃないの。

 そう思った瞬間、口は勝手に開いていた。

「あなたは間違ってますよ」

 彼は驚いた表情で私を見てきた。

 口を開けたまま私を見て黙り込んだ。

そして、乾燥しきった彼の唇がゆっくりと言葉に表れた。