「でも、上月くん、私のことなんて好きじゃない。」
「彼女になってもらうのに、俺からの好きは必要?」
ああもうこの人は何を言っているのだろう。
彼女になるのに俺からの好きがいるかどうか?
ああもうほんと
「日本語がとことん通じない、」
「ハ、そっちこそ。」
鼻で浅く笑った上月くんは、何故だか酷く小さく見えた。
「で?返事は?」
返事も何も、
「いやで …… 「返事はイエスかハイしか受け付けてないよ?」」
くっそうこの男、
「なんでもするって言ったよね?」とケラケラ笑っている。
「期間は1週間。やってくれる、よね?」
ノーなんて言わせない、とでも言うように圧力をかけてくる。
圧力鍋の中にでもいるかのようだ。
いや、それは違うか。
拒否権がない今、私に残された返事は
「ハイ、」
私のその言葉に満足そうに頷いた上月くん。
じゃあまず手始めに、と私に近づいて。
視線を合わせる。
バチッと目が合って、なんとなく気まずくて目をそらす。
「危機感、覚えようか。」
その時の上月くんの笑顔は、今まで出会った男の子の中で最もブラックな笑顔だった。