お礼、言えなかったな。
たくさん荷物の入った袋を下げて帰って言ったおばさんの背中を見ながらそう思った。
「花乃」
「な、んでいるの、」
「俺だから」
出たよ俺様。
唐突に出る俺様。
「花乃」
「ん?」
「さて問題です」
すべてが唐突すぎて頭痛くなってきた。
「なぜ俺はここにいるでしょうか」
何を言っているんだこの人は。
さっき『俺だから』って言ってたばっかりじゃないか。
言わせたいのか?そうなのか?
村人Bは嘘でじつは主役でした系のあれか?
「…… 上月くんだから?」
「んー、半分正解」
謎すぎ。
「正解は、」
───── グイッ
「花乃に会いたくなったからでした。」
唐突に抱きしめられて、耳元でぼそっと呟かれたその言葉。
なんだそれなんだそれなんだそれ。
そんなの、
「ずる、いっ…!」