──── ブォン
なんとなく電車に乗るのが嫌で、珍しく歩いて帰ることにした。
『上月くんは、私の事好きじゃない。』
自分の言ってしまった言葉を思い返してため息。
色のなくなった目を思い返してまたため息。
そして、ふたりで歩いて帰った日を思い出してまたため息。
「…っふ、く、ふっ、」
たった3日。
人を好きになるのには明らかに短すぎる期間だったかもしれない。
それでも、
「好きだったんだよ…っ!」
掠れた声で小さく叫んで、電柱のそばにしゃがみ込んだ。
通りすがりのサラリーマンには変な目で見られて、買い物袋をさげた知らないおばさんには「大丈夫?」と声をかけられた。
それでも涙は止まらない。
───── ザッ
突如、視界が暗くなった。
「ね、それ現在系にならない?」
さっきも聞いたのに、どこか懐かしさを含んだ声とともに。
「……っ」
「おばさん、ありがとうございます。
こいつと同じクラスの者です。」
その声にずっと私の背中をさすってくれていたおばさんは「あらまぁ」と立ち上がって去っていってしまった。