「ね、新くん、」
「ん?」
私は舞台で言うなら役すらもらえない音響係だ。
いくら村人Bとはいえ、彼女になっちゃダメだった。
ましてや、好きになるなんて、もっと禁断だった。
「わ、かれてほし、い」
「 ……… は、」
まだ教室には人が残っていて、少しだけ騒がしい。
教室の隅の方でしゃがみこむふたり。
思いのほか大きな声が出てしまって、注目を集めてしまって恥ずかしいけれど。
「別れて、欲しいの。」
「………」
もう一度言うも
「っ、」
新くん……上月くんの表情はピタリと動かなくて、変わったものといえば目に色がなくなったことくらい。
正直、心配。
自分から別れを切り出しておいて心配だなんて勝手すぎるけど。
あの日と ─── 資料室で泣いていた日と同じ目をしていたから。