「美波のその手の中にある貝殻。俺、あの時それを溺れる寸前に見つけたんだ。あぁ、お姉さんに似合いそうだなって」


きっと10年後にまた天色の貝殻の光に魅せられたのには何か意味があったんだろう。

「っ、そっかぁ!…似合う、かな?」


美波はぐしゃぐしゃな顔のまま貝殻を耳元にかざし、精一杯笑った。


「うん、似合う、似合うよ。…俺さ、美波が助けてくれた命、絶対に無駄にしないから。絶対大切にする。幸せになるから。……だから、俺がそっちいったときにはたくさん話聞いて?」


美波を力いっぱい抱きしめて、俺は美波に別れを告げた。


今の俺ができる最高の笑顔で。



きっと、涙でぐしゃぐしゃの顔で作った笑顔は不格好なものだっただろう。




けれど、それでも美波はすごく嬉しそうに笑ってくれた。



「うん。楽しみにしてる!」



段々抱きしめている感覚がなくなっていく。









美波は一瞬まぶしいくらい光輝いて……。