『海』と口にした瞬間。


陽人の顔色が変わった。


「海って…まさか、入ってないよな!?」


何言ってんだこいつ。


なんでそんな焦った顔…。


「入ってねーよ。大体、この濡れてない格好で分かるだろ。」


ホントは美波の身投げを止めるときに少し入ったけど、浜辺で話している間に乾いたから言わないでおこう。


陽人を見ると、あからさまにホッとしたような顔。


……なんなんだ、本当。


「な、ならいいんだけどさ。今度から、海に行く時は俺に言ってから行けよな!」


「はあ?なんで」


俺は小学生かよ。


さっきから、ホントこいつ何言ってるんだよ。


「頼むから……、な?」


そう言った陽人の顔は何かを恐れているようで…。


なんだか、俺が悪いことをしたみたいじゃないか。


「…分かったよ、今度からは一言声かける」


結局俺が折れてその日は終わった。