なんかこう……うまく言えないけど、前にどこかで見たことがあるような。


「ね、君と俺、前にどこかで会ったことある?」


その言葉に彼女は一瞬目を見開いた。


が、それは本当に一瞬のことで、すぐに微笑みを浮かべ、「ううん、ないよ」と、それだけ言った。


その様子に疑問を抱かなかったわけではないけど、あえて気にしないことにした。


おそらく、俺がいきなり突拍子もないことを言ったから驚いたのだろう。


「…そっか。…あ、君の名前教えてくれない?」


若干今更な気もするけど、名前も知らない人と話すというのは、なんだかこう、落ち着かない。


「私は美波っていうんだ。15歳だよ。」


名前がお互い海に関連してるなんて運命みたいだと彼女は笑った。