その夜。

9時半少し前に、正門前にみんなが集まった。

「じゃあ行こっか」

言うなり歩き出す広海君。

「どこ行くの?」

「もちろん、ジョイランド」

そこは一つのビルの中でカラオケやゲーム、ボーリングが楽しめる、お決まりのスポットだ。

「歩きでいいよね、いつもみたいに」

頷いて答えるみんな。

ゆっくり歩きながら、他愛もない話をしている間に華やいだビルに着く。

カラオケの受付はそこの2階だけど、もう人の輪が出来てにぎわってる。

「ねぇねぇ、1時間待ちだって」

「みんなヒマなのねー」

「どうする?」

「1時間ぐらいなら俺たちここで待つけど」

ヨッシーと彼氏が仲良くベンチに腰掛けた。

「そりゃ二人はいいわよ」

「1時間はタイクツよねー」

フクれてみせる広海君とルミちゃん。

と、ベンチの二人が顔を見合わせた。

「じゃあ何する?」

二人の声が揃ってる。

「揃って言わなくてもいいじゃない。魅せつけちゃってぇ」

「ホント息までピッタリ」

ツッ込まれても、ベンチの二人は満更でもなさそうだ。

「そりゃだってさ、世界で一番、」

「ア・イ・シ・テ・ル・からだもん。愛の力よね~」

ラブラブなふたり。

見ているこっちが照れちゃうよ。

「言う言う」

「もぉ、ごちそうさま」

冷めた様子でプイッと振り返る二人。

「さぁさぁ、こんなふたりは放っときましょ」

「そうね」

「ボーリングで時間つぶしね。さぁ、上に行きましょ」

と広海君が、先頭を切って階段の方へ歩き出した。

(えっ、ボーリング?)

考えた。