「見てよルミちゃん、指もこんなに細くてキレイよ」

と、薬指にリングが光る手でミライの手を取って撫で始める広海君。

(うわあ、何する気だよ)

ミライが触られてるってだけで胸が騒ぐ。

何しろここには二人の院生もいるんだ。

ここでバレたら、おしゃべりな彼女たちの口を塞ぐなんて不可能だって!

「産まれたてみたぁい。髪の毛だって、…」

と髪を撫で始めた広海君が、手をピタッと止めて不思議そうにジーッと眺め出した。

(ワッ!)

じっくり見られたら、さすがにマズいんじゃないか?

「…ねえミライさん、日本に来ていい美容室どこか見つけた?」

「ううん」

「じゃあ今度紹介してあげるね」

にっこり答える広海君。

(どう思ったんだ?)

わからないけど、とりあえずセーフみたいだな。

(…いや、待てよ、美容室紹介される方がマズイような…)

プロの美容師の目はさすがにゴマかせない気がする。

(ま、まあ、その時何とか言ってゴマかすしかないか)

マッタク次々と難問奇問が続くよ。

「ねえミライさん、ケータイの番号教えてくれない?」

って、僕なんかそっちのけで話を進めてるし。

「ごめんなさい。私ケータイ持ってないの」

首を振るミライに、院生の二人がビックリした顔になった。

「ウソ、持ってないのぉー?!ホントにぃ?」

「じゃあ連絡取りたい時はどうするの?」

とそこで、広海君がグイッと机の上に身を乗り出してニヤけた。