研究所を出て小一時間、昔からの商店街へと辿り着いた。

店先にまで商品が並んだ通りを人をかわすように歩く。

(正解だな)

デパートと違って溢れる人込みに右往左往する事もない。

と、時々ミライが後ろを振り返っているのに気付いた。

「どうしたんだ?」

「誰か、ずっと後ろについて来てる」

「えっ!ホントに?!」

誰かついて来てるだって?!

「間違いないのか?」

「うん。さっきからずっと同じ足音が聞こえてくるから」

真面目顔で見つめてくるミライ。

まさか、尾行されてるのか?

(ひょっとして警察!?)

マズイぞっ。

ミライは警察の許可を取ってないんだ!

(情報を掴んで追いかけて来てるのか?!)

それとも逮捕するタイミングを見計らってるのか?!

「とにかくマズイよな…」

尾行されてるなんて、どう考えたって良くない状況だ。

「このまま部屋に向かったら待ち伏せされてるかも…」

向こうは当然、僕のマンションだって知ってるに違いない。

人の少ないあの場所で、帰った所を捕まえられてしまうかもしれない。

(うおー、どうしたらいいんだ!)

困った。

ここでどうするかで、僕とミライの運命が決まるかもしれないんだ!

(そうだ、所長に電話だ!)

こんな時に頼れるのは所長しかいないっ!

携帯を取り出して目の前で構え、何気ない顔を装ってTV電話を掛けた。